大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和30年(あ)3518号 判決 1958年7月11日

主文

本件上告を棄却する。

理由

仙台高等検察庁検事長安井栄三の上告趣意(上告受理の申立理由)は末尾添付のとおりである。

しかし、刑法二五七条に「前条ノ罪」とは、同二五六条の罪すなわち賍物に関する罪の義にほかならないから、特別法である森林賍物に関する罪についても、特段の定めがないかぎり、その適用を除外すべき理由はない。また、森林法が森林資源の保護培養と森林生産物の増産とを図るための公益的立法であるからといって、そのことをもって直ちに刑法二五七条の規定の適用を特に排除せねばならぬほどの根拠とするに足りないし、森林賍物に関する罪の法定刑が刑法の賍物に関する罪に比し軽く定められているからといって、直ちに刑法二五七条の適用を否定する理由とすることもできない(昭和三一年(あ)第七三一号、同三三年二月四日第三小法廷判決参照)。それ故、森林賍物に関する罪については刑法二五七条の適用ないし準用がないことを理由として、本件森林賍物運搬の罪につき刑を免除した第一審判決を支持した原判決の法令違反を主張する論旨は採用できない。

よって刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例